私は中学生と小学生の息子のいる主婦です。主人の仕事にくっついて、家族でオーストラリアに1年半、イギリスに1年半、フランスに3年、計6年間海外で生活をしていました。昨年家族で日本に帰ってきました。
それぞれの国で生活した期間は短く、国によって生活していた環境もそれぞれでしたし、また、フランス語は勉強してもしてもすっごく難しく、英語だって最初はまっっっったく何言ってるのかわからなかったし、今でもいわゆる「日常会話初級レベル」という語学力。それぞれの国で色々なことを私なりに経験しましたが「オーストラリアでは〜」「ロンドンでは〜」「パリでは〜」なんてことを言えるほどの経験も知識もありません。そもそも、暮らしている場所や人種や宗教や生まれ育ちなどの背景が同じであっても、当たり前ですが「人は、人それぞれ」。同じ状況で同じ場所にいても感じること、そこから得られることは人によって違います。特にロンドンやパリには本当に様々な人が暮らしてますから、一概に「イギリス人は」「フランス人は」なんて言えません。そもそも「フランス人」ってなんですかね。国籍?生まれ育ち?難しいですよね。
そんな私ですが、6年間の海外生活でそれまで知らなかった世界を実際に生き、今までの自分は狭い世界の、良くわからない常識に囚われて生きていたんだなぁと思いました。知らなかった価値観を知り、視野が広がるのを感じました。
もちろん、語学もろくにできないボンクラおばさんの海外子育ては苦労の連続でした!特にパリには3年いましたが、1年目は「黄色いベスト運動」のデモが暴徒化して毎週おうちの近くで車が燃えたり催涙弾が飛んだりショウウィンドーが叩き割られていたり、2年目はメトロや電車の大規模長期間ストがあって出かけるのもままならなかったり、3年目はまぁ、世界中どこにいても大変だったコロナで厳しいロックダウン(コンフィヌモン)を経験したり、なかなかな3年間でした(笑)。
今回は、そんな私が考える「アールドヴィーヴル”Art de Vivre”」についてのおはなしです。
実は、3年間パリで暮らしていましたが「アールドヴィーヴル」という言葉を聞いたことはありませんでした。その概念も知りませんでした。そこで改めて考えてみます。
まずはフランス語から英語にしてみましょう。
(これはフランス語の意味がわからない時によくやっていた方法です(笑)。Google翻訳せんせいで日本語に直接訳すより、英語にした方が圧倒的にわかります。)
Art → Art
De → of
Vivre → Life / Living
Art de Vivre → Art of Living
ふむふむ、つまり、生活の芸術・・・??どゆこと・・・?
と、ここである言葉を思い出しました。
“Life is your art form” 「人生は自分自身の芸術作品である」
どこで聞いた言葉なのか思い出せませんが、とても印象に残っている言葉です。
「わたし」がまさに「いま」生きている日々「そのもの」。
「生き様」とでも言いましょうか。
それは、その人を代表する「芸術作品」なのだ、という考え方なのかな、と考えました。
私はアートが好きです。建物や空間も好きです。ロンドンに住んでいた頃に美術史講座を何度か受講して作品の歴史的背景や意味を教えて頂き、「美術、歴史、めっちゃ楽しい!!!」という経験をたくさんさせてもらいました。ロンドンからパリに移ってからはあちこちの美術館にたくさん行きました。
皆様はArtにふれて、例えば美術展や博物館に行って、建物や庭園を訪れて、圧倒された経験はありますか?
わたしは、その「技術力」や「色使い」「メッセージ性」などに触れて、うぉぉぉぉぉおお!!!と打ち震える経験を何度かしました。
わたしにとってアートは「癒し」です。
天才たちの筆遣いは普通じゃありません(笑)。たとえ技術があったとしても、私にはとても真似できません。強い強い、自らの美意識に対するこだわりを感じます。とてもじゃないけどそんなに貫けない、と思える異常なほどのこだわり。でもそのこだわりが良いんです。そのこだわりが異常なほどのものだからこそ、後世の人がみても多くの人を引きつけるのです。片手間でやっつけたものに、感動は生まれないと思います。私は、その天才たちのこだわりに満ちた筆遣いをみると、「あぁーーー自分らしくいて良いんだよなぁ!それがかっこいいんだよなぁ!!」と、心から癒されるのです。
一方で、どんな天才が作るものでも、人の作り出すアート作品は自然の作り出す素晴らしい作品には敵わない!と思いませんか?山や海、川、空などの雄大さだけでなく、花や実、小さな虫の美しさは、気付いた人だけが知ってる感動のアートです。
「Art」「美術」「芸術」は、
それに触れることによって「心がぐわぁっと動く」または「心がほっと落ち着く」もの。
そんなふうに心に響くことで、「自分らしさ」を思い出せる。自分に戻れる。
そんな「きっかけ」となるものなのかな、と私は感じています。
誰かが「心が動いた!」ものが、自分も同じように感じるとは限りません。
そもそも、人はそれぞれ敏感な部分が違うといいます。耳(音)、目(見た目)、口(味)、肌(触りごごち)・・・などなど、どこが満たされるとより幸せに感じるかは人それぞれ全然違うのではないでしょうか。
まずは自分にとっての心地よいものを知ることが大事なのかなと思います。そのためには、とにかく色々触れてみること!
美術館、博物館、庭園、公園、様々な風景、色々な音楽。こんなご時世ですから、動画や小説、またはオンラインツアーや配信イベントなんてのも良いのかも。
色々試してみて、自分にとって「自分に戻れる」きっかけとなるものは何かを探る。
ここで大事なのは主語が「わたし」であること!
「流行ってるから」「みんなが良いっていうから」「これをいいと思っとけばなんとなくよさげだから」で興味を持ち試すのは良いけれど、最終的に「じぶん」が心地よいものを選び取らなければ意味はありません。
自分の「好き」を知るために経験を積む。若い頃にはわからなかった、自分自身に気づく。そうすることではじめて、アールドヴィーヴルを取り入れた暮らしが送れるのではないかなと思います。人生は40から!フランスでは50歳から、なんて言いますよね。まさにその通りで、ひとつひとつの経験が自分を豊かにするし、そうすることで人生は彩られていきますよね。それは意識してやっていかないとなかなかできないし、若いだけでは得られないことなんですよねぇ。
ちなみに、私の心落ち着く時間(おうちで簡単バージョン)は、
・お菓子を作る
→甘い匂いは人を幸せな気持ちにさせますよねぇ〜。
・雑巾掛けをする
→エッセンシャルオイルを雑巾にたらして掃除するとすっごく気分がいいです。
・ウクレレをひく
→時間を忘れて夢中になれる時間です。
・勉強する
→昨日よりも1つでも新しい知識が増えれば成長!成長を実感できるってステキ。
・生活に必要な簡単なものを作る
→テーブルクロスとか小さなポーチとか、好きな布ですぐに出来るものを。
ロックダウン中など心がざわつく時は、こんなことをよく意識してやっていました。
今は、よく海外のラジオを聞いています。英語で何か喋ってるのを聞いてると、海外での気楽な暮らしを思い出します。今も、私の軸に戻れるきっかけを探し、試し、フィットするものを模索し続けています。
前述したように、Art de vivreというのをフランスに住んでいた時には知らなかった私ですが、今思えば「これが ”Art de vivre” なのかなぁ」ということをあげていきます。
私が住んでいた場所柄かもしれませんが、いつもとってもおしゃれをしているご年配のマダムをよく見かけました。きちんとした皮靴に、いかにもモノが良さそうなお洋服、アクセサリーも季節に沿ったものを身に付け、しっかりとお化粧をして、手には買い物カート。きっと普段のお買い物にいくだけなんでしょう。そんな姿をみるたびに、パリらしいなぁと感じていました。
大体週2回ほど決められた場所にたつマルシェは、規模の大小はありますが住人にはなくてはならない存在です。私も毎週通ってました。魚屋さん、お肉屋さん、八百屋さん、チーズ屋さん、パン屋さん、、、それぞれ個性のあるお店が立ち並ぶ中、私が毎週通っていたマルシェには2軒の花屋さんがありました。街中の花屋で買うより安く、仕入れたばかりの花は新鮮で長持ちするのでよく買ってました。そして、買ってる人もたくさんいました。食べ物と同じように「日用品としてのお花」がパリに住む人たちの暮らしにはあるのでしょう。
大小様々ものすごーくたくさんある美術館では、いつも色々な企画展が開催されていて、街中やメトロなどでその広告が大きく出ています。私も色々と行きましたが、コロナ禍で観光客のいない時期でも、多くの人がいました。それぞれの絵や彫刻はもちろん、企画展の多くはその作家や企画を説明するためのパネルがありますが、皆さんそれをとにかく熱心に読む姿が印象に残ってます。その作家やアートに特別詳しい人だけが美術館に行くのではなく、作家やアートを学び、楽しむために多くの人が訪れてるのだなと感じました。
パリ市は山手線の内側とほぼ同じ大きさで、人口は200万人以上のなかなかの人口密度ですが、パリはセーヌ川沿い一体が世界遺産なので、日本のように近代的な高層ビルやマンションが立ち並ぶ事はありません。その中でも圧巻はトロカデロからみるエッフェル塔の眺めです。エッフェル塔があるのはパリ市内の住宅街でありオフィス街でもあります。でも、トロカデロからみるエッフェル塔は、どーーーん!!!とひらけていて何も邪魔するものはありません。エッフェル塔は世界で一番美しい、ほら見てよ?と言わんばかりです。フランスの強い美意識とプライドを見せつけられているようです(笑)。(この記事の最初の写真はトロカデロ広場からの眺めです。)
パリ市内には、東にヴァンセンヌの森、西にブローニュの森という、大きな森が二つあります。庭園や公園も、規模の大小はありますがあちこちにあります。多少肌寒くても天気が良ければ老若男女問わず、森や庭園で日光浴やピクニックを楽しむ姿が見られます。自然の中に身をおくことが暮らしの質をあげることを、パリに住む人はよく知ってるのですね。公園や緑の多さはメルボルンもロンドンもすごかったです。
フランスでは日本のアニメも人気でした。私の感覚では、私の生活した3カ国の中で一番日本のアニメ人気が高かったように思います。子供向けのアニメではなく、文化としてアニメが認知されているように思います。超有名どころのジブリやドラゴンボール、ポケモン、ワンピースだけではなく、色々な日本のアニメや漫画を見かけました。フランスに住む日本のアニメが好きな人たちにとっては、アニメはもちろんArtであり、アニメを生活に取り入れることはまさにアールドヴィーヴルということ。このことについてはまたの機会に書ければなぁ〜と計画してます!
広々として、光と空気の気持ち良い、大きな大きな美術館の展示室を想像してみてください。
そこに、世界中のいろーーんな人たちの「人生」という「作品」がたくさん並んでいます。
あなたの「作品」はどんなものでしょうか?どんな「作品」にしたいでしょうか。
どこに住んでいても、どんな暮らしをしていても、世界がどんなでも、誰がなんと言おうと「Art de vivre」は実践できる、私はそう考えます。
私の人生の作品はどんな風にしたいかなぁと考えた時に、必ず浮かぶ風景があります。
タスマニアのチョコレート屋さんの横長の窓で切り取られた風景です。青い空と濃い緑の芝生に木々、湖と羊。気持ちのいい風がざぁざぁと音を立てて吹いている。
この風景のような作品であるために、どんな自分でいたいかなぁ?
心から自分に満足しながら生きていければ、それこそ最強ですよね。
人生って、どんなに毎日自分らしく努力を重ねていても、理不尽なことや、どうしようもないこと、ありますよね。あるんですよ、どこに住んでいても。
そんなときこそ、自分にとってのアートに触れて自分らしさを思い出すことで、平常心に戻れるのかなと思います。そんな風に暮らせたら、アールドヴィーヴルのある暮らし、と言えるのかもしれません。
でも、体が元気じゃないと立ち向かえないですよね。自分らしさに戻るためには、元気じゃないと!
体にいいとわかってるもの、ちゃんと食べましょ。ふかふかのお布団でたくさん寝ましょ。からだしっかり動かしましょ。いっぱい笑いましょ。
日々の小さな幸せを見逃さないためには、心に余裕がないと難しい。心に余裕がある時って、きっと体も元気ですよね。
これを見れば、この匂いを感じれば、これに触れれば、聞けば、のどかな気持ちになれるもの、なんでしょうか。自分を知って、自分を満たして、そんな日々を丁寧に積み重ねて、、、、今日も明日も、暮らしていきましょうね。