北欧で暮らす人々の多くは、自然の中でのんびりリラックスしたり、きのこや木の実など自然の恵みを収穫して食卓に並べたりすることが大好きです。また、幼少期から自然に親しんで「自然を守るために人間ができることは何か」を学び、サスティナブルへの意識が高いのも特徴です。
「自然とともに生きる」ことが文化として根付く北欧の暮らし。一見すると難しそうですが、実は日本にいても取り入れられる要素がたくさんあります。北欧の生活と自然との関係性や、ナチュラル志向な日々を送る秘訣をご紹介します。
ヨーロッパの人々は、自然とともに暮らす方法を幼少期から徐々に身につけています。スウェーデンには「森のムッレ」という自然教育の方法があり、楽しく遊びながら自然に興味を持つこと、自然を大切にすることを学びます。また、世界各国の環境への取り組みを数値化する「環境パフォーマンス指数(EPI)」で世界一になったデンマークでも、国の教育方針として学校のカリキュラムに環境の項目を取り入れています。
自然の中で遊び、リラックスして過ごすのは北欧の人たちにとってごく当たり前のことです。夏のバケーションシーズンには、スマートフォンの電波が届かない田舎のコテージで過ごすのも大人気。森の中を散策したり、川のせせらぎに癒されたり、全身で自然を堪能するのはとても贅沢な過ごし方ですね。
北欧諸国では「自然享受権」が全ての人に与えられているのも特徴です。これは北欧で古くからある「自然は誰にでも属する」という考え方から生まれたもので、20世紀には明確に権利として整備されました。自然や近隣住民に損害を与えなければ、国有地や私有地に関係なく自由に散策・滞在したり、植物や果実を採取したりしても良いと定められています。
一人ひとりに自然を尊重し守る気持ちが根付いているからこそ、「少しだけ自然の恵みを分けてもらう、むやみな採取はしない」「未来の森のためにゴミを持ち帰る」といったルールが守られ、自然との共存が実現しているのでしょう。
普段の生活の中で、北欧の人たちはどのように自然と共存しているのでしょうか。いくつかの事例を交えながら、日本にいても真似できる「自然を楽しみながら暮らすための工夫」をお伝えします。
北欧の子どもたちは、自然にあるものを遊び道具にしたり、森の中で木登りや木の実をとって食べたりすることを幼少期からたくさん経験しています。よほど危険なことをしない限り、大人たちはそれを静かに見守ります。
時にはケガをすることもありますが、子どもたちは自然での成功体験・失敗体験を通して「やっていいこと、だめなこと」「自然の大切さと自然を守るためにするべきこと」を学んでいきます。日本の子どもたちはテレビやゲームをして過ごす場合も多いと思いますが、時には家族で山や海に出かけ、植物や生き物に触れるのも良いのではないでしょうか。
近年、「北欧ガーデン」が日本で人気を集めています。木の枝を切るなど過剰に整えるのではなく、草花のありのままの姿を愛でるスタイルが特徴です。ガーデニングというと手間がかかるイメージですが、北欧ガーデンなら初心者の方も挑戦のハードルが低くなりますね。
また、北欧では寒い冬に少しでも家の中が明るくなるよう、花瓶に生けた花や植木鉢を飾る家庭も多いようです。外は厳しい寒さでも、家の中に小さな植物があるとホッと一息つける癒しの空間を演出してくれます。
北欧の家具や道具といえば、木でできたものを思い浮かべる人が多いでしょう。テーブル・椅子などの家具はもちろん、食器やバスケットといった日常使いの小物まで、木の温もりがあるものを大切に使うのが北欧流の暮らしの知恵です。長く使うために、デザイン性よりも耐久力や飽きがこないシンプルさを追求した道具がよく選ばれるようです。
最近では赤ちゃんの頃から使える木製のおもちゃも日本で人気を集めています。木製品はメンテナンスが簡単で、大切に使えば次世代まで受け継ぐこともでき究極のエコにつながります。大量生産の製品を短期間で消耗して捨ててしまうよりも、少しだけ良い木製品を長く使うことが豊かな生活への一歩となるかもしれませんね。
北欧の人たちのように、自然とともにある暮らしをするのはそれほど難しいことではありません。キャンプや登山など本格的なアウトドアを無理に始めなくても、今より少しだけ意識して自然の中に出かけ、風や水の音に耳を傾ける。それだけでも自然との一体感を感じられるはずです。
また日常生活では、窓辺に小さな鉢植えを置く、通勤途中の公園で植物を見て季節の移ろいを感じるといった行動を意識するだけで、心が穏やかになります。スマートフォンばかり見て下を向くのではなく、時々は目線を上げて自然を感じると心が癒されるのではないでしょうか。