歴史、伝統、音楽、料理、ワイン、建物、文学、ファッション、など数えきれないほどの魅力で溢れているフランス。
そんなフランスのライフスタイルに深く関わっているアール・ド・ヴィーヴルとは何か紐解いていきます。
アール・ド・ヴィーヴルはフランス語で『Art de Vivre』と書き、「生活の芸術」「生活の美学」「暮らしのアート」などと翻訳されることが多いです。
「art」という言葉が入っているので、絵を描いたり飾ったりと、日常生活に芸術を取り入れることだと勘違いされそうですが、それは間違いです。正確に言えば、芸術を取り入れることは『答えのうちの一つ』に過ぎないということです。
では、アール・ド・ヴィーヴルの概念とは何なのでしょうか?
実のところ、アール・ド・ヴィーヴルは簡単に言い表せれるものではないのです。なぜならば、単的な答えはなく、人それぞれの生活状況や環境、心のあり方、その他にも多くの要素が関係し、人それぞれ答えが違うものだからです。
『アール・ド・ヴィーヴル=○○をする』ではなく、『芸術のように美しく愉しい生き方=アール・ド・ヴィーヴル』なのです。自分の生き方自体が芸術だなんて流石はフランスですね。
次では、もう少しアール・ド・ヴィーヴルについて深く探っていきます。
もっとカジュアルな部分だけ知りたい方はこちらへどうぞ。
>>アール・ド・ヴィーヴルを日本の暮らしで実践するヒント
>>アール・ド・ヴィーヴルの具体例は?
先に述べましたが、アール・ド・ヴィーヴルは人それぞれの『生き方』を表した言葉です。そして、自分にとっての「生きる喜び」が何かを問いていく作業でもあります。
他人がどうかではなく、自分にフォーカスしている点がフランス人らしいですね。
まずは自分自身を知ることから始める必要があります。
自分の好きなものや欲しいものを見極めて、少しづつ築いていくものなのです。
それが分かってくると人生に彩りと豊かさが生まれてきます。
少しでもヒントが見つかるように、パリジャンヌを参考にしてみましょう。
パリジャンヌのファッションは、カジュアルでありながらエレガントな雰囲気がありますし、服装やメイクはやりすぎないのが特徴的です。カジュアルな服を着ていても、印象的な”アクセサリー”を組み合わせることで素敵に魅せているのです。
近所のパン屋さんにクロワッサンを買いに行くだけだとしても、普段のスタイルを崩すことはないです。例え近場であっても、自分の芯をしっかりと守っています。この気持ちこそが、エレガントさとカジュアルさを両立させる第一歩なのです。
心の面でも参考になる点はあります。
例え人生でどんなことがあっても、その経験に感謝する時間を持ち、常に明るい兆しがないか探してみましょう。優雅さと寛容さを忘れないのがパリジャンヌです。
また、五感を使って新しい事に挑戦することも大事です。
インスタグラムで見つけた素敵なレシピを試したり、少し高価な香水を自分のご褒美として香りを愉しんでみたり、気になる曲があれば時間を設けてゆっくりと聴いてみるのもいいかもしれません。
人生を楽しみ、愛を深めて、最高の自分になろうと努力する、それがパリジェンヌなのです。この姿勢こそがアール・ド・ヴィーヴルに繋がっているのでしょう。
魅力と感動に満ちた文化を作り出してきたフランス。
フランスの料理や、ファッション、建築、絵画などを見ると分かりますが、フランス人は美しいもの、洗練されたものを好み、ディテールにまでこだわっている事がわかります。
量を選ばず質にこだわることで、シンプルな中にも美しさが出てきます。料理であれば食材や食器にこだわり、インテリであれば天然素材を使ったものや意匠にもこだわります。一つ一つの質が高ければ、それだけでも心地よい空間を作れます。
高い物を買えばいいわけではなく、物理的にも精神的にも耐久があるかを考えてから購入することが大事です。精神的な耐久とは、『飽きがこないもの』です。流行を追わないことと、買った時が美しさのピークであるものを買わないことです。使っていくうちに美しさが増していくものこそ、価値ある美しさなのです。
このように、本質的なものを選ぶ習慣がアール・ド・ヴィーヴルへの一歩でもあります。
これは、フランスに限ったことではありませんが、物を買うということは、その企業へ投票をするようなものなのです。
欧州では、企業がSDGsに対してどのように取り組んでいるかも購入判断の一つと言われてます。安くても環境破壊に繋がったり、製造者が低賃金であれば、結果的に全体が悪い方向へ進んでしまいます。
そして、その企業がどういった想いで商品を作っているかも重要です。ストーリーに共感できれば、使う度にその想いがよみがえり、ハッピーな気持ちになれます。
本当に良いものとは、製品自体の質だけでなく、裏側にある想いや企業の本質でもあります。
日本はフランスと文化や歴史が違いますが、日本に住んでいても参考になることはあります。形が違っていても真髄を捉えていれば、同じような体現をできるはずです。
例えば、日本人は旅に目的や目標を作り「何かをする」ことが多いですが、それはタスク達成のようなものです。そうではなく、旅自体を楽しんだり、旅先でタスクを作らずゆっくり過ごすことです。そうすれば、心に余裕が生まれ、周りにも目がいくようなり、ちょっとしたことに発見や喜びが生まれてくるはずです。
今を楽しみ、時間をかけることがアール・ド・ヴィーヴルなのです。
今を楽しむということは、今あるもので愉しむということでもあります。無いものや、隣の芝生を羨むのではなく、自分が持っているものでどうやれば楽しめるかを考えるのです。他人がどうかではなく、自分がどうかがアール・ド・ヴィーヴルを実践する上で大切なことなのです。
そして、そこに繋がるためには先にも述べたように、普段から質の良い物を選ぶ習慣が関わってきます。
本当の意味で質が良い物を使っていると、その存在が美しく見るだけで気持ちが上がっていきます。また、飽きる事なくリペアしながら永く使えるので、エコ活動にもつながります。エコに貢献しているという気持ちもまた心を豊かにするキッカケに繋がり、良い循環が生まれます。
ここまで述べたようにアールドヴィーヴルに明確な答えはありません。なぜならば、アールドヴィーヴルは、自分の好きなものや欲しいものを見極めて、少しづつ築いていくものだからです。物事の見方を意識することが大切であり、心地よいと感じたりポジティブなものを見極めることで、自分の羅針盤が出来上がり、そして自分のアールドヴィーヴルが出来上がっていきます。
と言っても、参考になる例がありますので、いくつかご紹介します。
アール・ド・ヴィーヴルへの一歩として、一番簡単で、そして直ぐに始められるオススメな例です。ただ飾るだけで、日々の生活の中に華やかさと変化が生まれ心が豊かになります。季節の花を飾れば四季を楽しむことができ、クリスマスやハロウィンといったイベントに合わせた花であればイベントを盛り上げてくれます。大事に自分で育てた花であれば、愛着と感謝が生まれ、心の中にゆとりが生まれてくるはずです。そして、食卓に飾ることで共に食事をする人との会話のきっかけにもなり、楽しい時間の演出の助けにもなります。
とっておきを普段使いする
とっておきのモノを大事にし過ぎて全く使わないことはありませんか。心地が良く感じるものは普段から使うように意識するだけで、日常に小さな豊かさが生まれます。例えば、余所行き用に買ったお気に入りの香水を、用事がなくてもたまに普段使いをする。来客用に用意していた上質な食器やカトラリーを普段使いしてみる。 それだけで、変わらない日常に変化と高揚というスパイスを降り注いでくれます。
生活感を楽しむ
パリにある家のようなアール・ド・ヴィーヴルな雰囲気を醸し出すためには、生活の痕跡を隠すのではなく、むしろ特徴づけることが大切です。例えば、ガラス扉のキャビネットやサイドボードなどに、ガラス製品や食器などを見せるように収納したり、小物や食材などを目立たないようにおしゃれなバスケットやボックスに収納したりします。
アール・デゥ・ヴィーヴルとは、究極的には “生活感 “を強調することでもあります。
ただし、この手法を使う為には、普段から上質なものを選んだり購入する習慣が必要です。本当に上質なものは、在るだけで美しいですが、そうでないものが並んでしまうと雑多な雰囲気になってしまいます。
そして、コンセプトを持ち、自分が心地よいと思うもので揃えることもポイントです。年代を揃える、配色を揃える、質感を揃えるなど方法は色々とありますが、一番簡単かつ効果的な方法は自然素材を使うことです。
天然素材を選ぶ
家の中を上質で洗練された空間にするためには、素材選びが重要になります。自然由来の素材を使うことにより、心地よい空間をつくることができます。
天然素材とは、木材、土、紙、布、ラタン、リネン、石材、ガラス、レザーなどがあります。
例えば、天然石は廃れることがなく時代を超えても使える素材です。無垢の木材を使った床は温かみがあり、木目の質感が部屋全体に広がります。家具だけでなく小さな雑貨にまでこだわることが重要です。細部にまで自然素材を取り入れることで部屋の雰囲気は奥深さが生まれ、その場所にいるだけでのどかな気分になれます。
・ディテールにまでこだわる
・ゆっくりと時間をかける
・カフェでエスプレッソを嗜む
・ゲストを迎える術
・家族との時間を大事にする(特に会話)
・友人との時間を大切にする
・友人とカードゲームを楽しむ
・木陰で昼寝をする
・木陰の公園や石畳の路地を散歩する
・シンプルなことを楽しむ