デンマークの人が当たり前におこなう「家具を選び抜いて自分好みの空間を作る」ことは、日本で実践する人がまだまだ少ない印象です。また、「なぜ心地よい空間で暮らすことにこだわっているの？」と不思議に思う人もいるかもしれません。
今回はデンマーク流の「生活空間にかける想い」についてまとめます。デンマークの人たちが重視するポイントを知れば、日本にいても北欧風の暮らしを実践することは難しくありません。あなたの日常を少しだけ豊かにするエッセンスとして、きっと参考になりますよ。
デンマークの人たちが快適な生活環境を整えたいと考える背景には、いくつかの理由があります。
一つ目は、長い冬の期間を快適に過ごしたいから。デンマークでは10月頃から日中の平均気温が10度前後になり、日本の北海道より1か月ほど早く寒い時期がやってきます。春が訪れる4月頃まで厳しい寒さで空もどんよりしていることから、「デンマークの冬は長い」と言われるのです。そんな冬を家の中で温かく快適に過ごすため、デンマークの人たちは「おうち時間」を充実させる工夫をこらしています。
二つ目は、「家のコーディネートで自分らしさを表現できる」と考えているから。日本では一般的に、自分らしさを表現するのは服装やアクセサリーなど「普段身につけるもの」という考え方が主流です。一方デンマークでは、身の回りの空間まで含めて自分のアイデンティティがあるという意識が強いようです。親しい人を招いた際に、自慢の家具を紹介して自分らしさをアピールするのもデンマークでは当たり前の風景。最もリラックスして過ごす自宅だからこそ、多くの人が「家をこんな空間にしたい」と明確に思い描いてデザインしているのです。
北欧の家具と言えば「シンプルでおしゃれなもの」をイメージする人は多いでしょう。しかし、デンマークの人たちが重視しているポイントはそれだけではありません。デンマーク流のインテリア・家具選びのポイントについてご紹介します。
デンマークの人たちは、長く愛用できる家具を選びたいと考えています。まだ仕事に就いたばかりでお金のない若者の場合、大量生産の安い家具を選ぶこともありますが、誰もが「いつか良い家具を買って、長期間大切に手入れしながら使いたい」と思っているのです。
その理由の一つは、子どもの頃から良い家具に触れていること。デンマークには世界中で知られる有名家具メーカーが多数存在し、自宅はもちろん公共施設にも上質なものが置かれていて、幼い頃から良いものを見る目が自然と養われています。
また単純に良いものというだけでなく、「いかに自分が心地よく過ごせるか」という判断基準も大事にしています。そのため、家具を選ぶときはショップに何度も足を運んだり、他のものと比較したりして妥協しないのが特徴です。中には祖父母や両親が大事に使っていた家具が次世代まで引き継がれて使われることもあります。
お気に入りの家具選びに時間をかけるデンマーク人ですが、当然ライフステージが変われば必要な家具も変化します。引っ越しをしたり家族が増えたりすれば、家の中のスペースの使い方も変わるからです。
例えば家族が増えた人なら、「これからの家族の生活を充実させるインテリアはどういうものか」「みんなが本当に使いやすいものはどれか」という観点で新しい家具を選びます。そして家に迎え入れた家具は、また大切に手入れされながら受け継がれていきます。
日本では「断捨離」という言葉がブームになりましたが、デンマークでは家具が不要になってもゴミとして捨てることはほとんどありません。夏の時期に開かれるフリーマーケットでは、使わなくなった家具が数多く出品されます。まだ使えるものは次の人へ譲り、また新しい持ち主のもとで思い出が積み重ねられていくのがデンマーク流のリサイクル術です。
デンマークでは家の照明にこだわる人がとても多く、特に寒い冬は暖色系のランプやキャンドルが好まれます。長い冬の期間を少しでもゆったりした気持ちで過ごせるよう、木や布、陶器など手づくりの温かみを感じるものがよく選ばれているようです。
色はたくさん使いすぎず、統一感を出すことも特徴です。これは「家の中は自分のアイデンティティや個性を表す場所である」と考えるデンマーク人ならではのこだわりといえます。リラックスタイムには間接照明などを使い、部屋の中をあえて暗くして落ち着いた空間を作るのもおすすめです。
自宅は日々の疲れを癒し、明日への活力を作る場所。そのために必要なものにはとことんこだわるからこそ、デンマークの人たちは毎日幸せに暮らしているのかもしれませんね。
デンマークの人たちにとって、お気に入りの家具をそろえることは幸福に直結します。心地よい空間を作り、暮らしの質があがると毎日幸せな気分で過ごせますね。
とはいえ、必ずしも高級な家具を買うのがいいとは限りません。一番大事なことは、自分自身がその空間で心からリラックスして過ごせるかどうかです。
まずは普段過ごしている部屋をじっくりと観察し、より幸せな生活にするためには何が必要かを考えてみましょう。背伸びすることなく自然体で、できるところから北欧の考え方を暮らしに取り入れてみてくださいね。
